声明 就労継続支援A型事業閉鎖に伴う一斉解雇について

2017年9月1日

声明

就労継続支援A型事業閉鎖に伴う一斉解雇について

一般社団法人ゼンコロ
会長 中村敏彦

 

 7月に倉敷市や高松市にある就労継続支援A型事業所の7事業所が一斉に閉鎖され、280人にも上る障害者が解雇されました。経営悪化が主な要因で、市は閉鎖までに障害者の受入れ先を見つけるように勧告していたと報道されていますが、そう易々と次の職場が見つかるとは思われません。この件以外にも名古屋市や関東地方で相次いで廃業準備が進められているといいます。過去にも全国的にも例をみない規模の一斉解雇です。

 

 ゼンコロは結核回復者と医師によって1961(昭和36)年10月に創立以来、障害者の「完全参加と平等」の実現のため積極的に運動を続けており、1972(昭和47)年には国内で最初の福祉工場を開設し、その後も多くの障害者雇用を実践してきました。常に障害のある人の労働の場と能力開発に視点をあてて努力してきたのです。現在は10の法人で構成され282名の障害のある仲間が雇用されています。私たちは、その経緯を含め、会員法人の全員解雇に匹敵する数であることを考えると、背筋が凍り、強い憤りを覚えます。

 

 就労継続支援A型事業は障害者総合支援法を根拠法に、開設する場合は事業計画や運営体制などの必要書類を基に事業開始申請を行います。雇用が前提であり、給与は事業所が行う事業収益で賄い、事業収益が見込まれないと適切な事業運営は困難を極めます。また、要件を満たすためには、職業指導員や、社会生活支援を行う生活支援員の配置が必要となり、事業所の新規申請を行う際には、継続して適切に事業が行えることが確認できた上で、事業開始の指定を受けることになるのです。指定する際に予見できなかったのか、雇用率の引き上げを意識するあまり安易に認可してはいなかったか、行政責任は問われないのか、さらに他の地域では起きていないのか、疑問と不安が膨らみます。

 

 当該事業は第2種社会福祉事業に位置付けられ、経営主体の制限が緩和されたことにより、様々な事業体が実施するようになり、2016年度には全国で3,600カ所に増えました。近年では、法の趣旨または厚生労働省令および都道府県条例に規定する人員、設備および運営基準に抵触し、不適切な運営を行っている事例が社会問題になっていました。こうした事態を踏まえ、厚生労働省令等が平成29年4月1日より改正され、事業運営が適切なものとなるように、基準を満たさない事業者には経営改善計画の提出を求めるなど新たな義務付け等がなされました。また、障害者総合支援法改正において、地域の障害福祉計画上の必要なサービス量を確保できている場合には、自治体は新たな指定をしないことを可能としました。その最中の事態です。この間の国や自治体の対応は適切なのでしょうか。

 

 障害が自己責任に転嫁され、障害者福祉がサービスの対象となったことで、福祉のビジネス化を生みました。市場参加者が自己利益を追求する市場原理の中では、とりわけ重度障害者の労働環境の向上は望みにくいのです。この度の社会現象の最たる犠牲者は、障害のある労働者であることを肝に銘じなければなりません。