声明 深刻な問題かつ重大な責任-障害者雇用「水増し」問題の真相解明と障害者労働・雇用問題の改革を-

2018年8月28日

声明

深刻な問題かつ重大な責任
-障害者雇用「水増し」問題の真相解明と障害者労働・雇用問題の改革を-

一般社団法人 ゼンコロ
会長 中村敏彦

 私たちは、どんなに障害が重くても働きたいと希望する人たちは、一般労働市場に開放されるべきであるが、それが実現されていない現状では、一時的あるいは継続的に、必要な支援を受けながら働く場を提供することが重要な取り組みであると主張し続けている。

 

 今般発覚した障害者雇用「水増し」問題は、その模範を示すべき中央省庁や自治体等による、いわば自ら法を遵守しなければならない行政による国民への裏切りであり、民間企業をはじめ、障害分野の失望は計り知れない。自ら明言し、また国民に示すべき立場で、40年余りにわたって法律違反が重ねられてきたことの責任は重大である。障害者雇用促進法は、文字通り障害者雇用を促進することが目的であり、雇用率を達成することではない。そして、数値目標は、達成するための指標となるが、達成後は停滞するという副作用も持つ。本件はその副作用を作り出したともいえる深刻な問題でもある。

 

 本件によって、公表されている多くの各種データへの信頼は確実に失墜した。ガイドラインの理解不足や拡大解釈などの理由は通用しない。水増しされたその数は、2017年度だけでも3,400人を下回らないとされており、40年余りに亘るその愚行によって、雇用の機会を失った障害者の数は相当な数に上ることは間違いない。行政自らに不正があれば指導力を失うことへの懸念はあるが、これまで熱心に取り組んできた民間企業の雇用促進に水を差すことにならないよう心より願う。

 

 納付金や調整金・報奨金などの飴と鞭を伴った義務雇用制度は、促進するためのひとつの手段ではある。しかし、雇用の基本的な目的である社会や組織でその人の労働力を活用すること、その人にとっては、社会生活を送るための糧を作りだすものが伴わなければならない。国は共生社会の実現、一億総活躍社会の実現などに取り組み始めたではないか。ならば一層の事、障害者の労働能力を活用するという視点こそが重要であると考える。

 

 信頼を回復するために当面国が行うべきことは、徹底して今般の実態を明らかにすること、そして国民に、すべての関連する事実を公表することである。さらに実質的で本格的な検証体制を確立するとともに、今後の障害者雇用制度を改善し向上させることである。

以上